3年に一度愛知県を舞台に開催される国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2016』が、いよいよ2016年8月11日(木・祝)〜10月23日(日)までの74日間開催されます。
現代芸術をはじめ、映像やオペラ、パフォーミングアーツなど幅広いジャンルの119組のアーティストの作品が展示される総合芸術祭。しかしながら、「アートって難しいし、現代芸術をどう楽しめばいいのかわからない…」そんな思いから、このような一大イベントにも足を運ぶのを躊躇してしまう方もいるのではないでしょうか。
そこで、名古屋市内の会場で観られる数多くの現代芸術展示の中から厳選した、とりわけビビッドでセンシティブな9つの展示をご紹介します。
1. 田島 秀彦|6つの余地と交換可能な風景
岐阜県出身のアーティスト・田島秀彦氏の作品は、愛知芸術文化センター11F・展望回廊にて展開。
栄の街を一望できるこの場所は、ピンク/イエロー/グリーン/ブルーなどのフィルムが窓ガラスに貼られ、まさに虹色に染め上げられた空間に変貌します。
回廊は柔らかな布で仕切られ、装飾タイルをトレースした独特のスタイルの作品などが展示。
晴れの昼間にはプリズムのような効果が発生し、その場の物や人のすべてを彩る異空間へと変わるでしょう。
展示場所 | 愛知芸術文化センター11F 展望回廊 →google map |
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2. ジェリー・グレッツィンガー|Jerry’s Map
床から天井にまで敷き詰められた巨大なアトラス。なんと50年にもわたって描き続けられたという「想像上の落書き地図」だというのです。
地図というものは見る人に、この場所はいったいどんな場所なんだろう?というイマジネーションを与えてくれるもの。
いかにも空想的な描画もありながら、なんとなく本当に存在する世界かのように見えてくる。今回のトリエンナーレのテーマである「旅」にもふさわしい、好奇心をかきたててくれる作品です。
展示場所 | 愛知県美術館 10F →google map |
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3. 三田村 光土里|アート&ブレックファスト
その空間は女性が住む部屋のようであり、作家の工房のようであり、空想の世界のようであり_。
ありとあらゆる日常空間のモノたちと時間、言葉が、追憶の中でつながり、紡がれていく。
日本人女性作家の作品であるため、我々と非常に近い日常感覚に親近感が湧きます。
非常にポップでかわいらしい小物遣いも見もので、細かいアイテムを見つけ出していく楽しみもありそうですよ。
展示場所 | 愛知県美術館 10F →google map |
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4. マーク・マンダース|Room with Unfired Clay Figure
アトリエのような空間に散在する、人や動物の形をした彫像たち。
その彫像はその姿を精巧に模して造られたものであるが、いずれもどこかが欠損している。
破壊されたもの、それが意味するのは「死」。しかしながらその不完全な彫像にさえ「生」の息吹を感じるのはなぜでしょうか。
それは人というものは不完全なものであるということに、観ている我々が共感を覚えるからではないでしょうか?
展示場所 | 愛知県美術館 10F →google map |
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5. 竹川 宣彰|新・猿蟹合戦 戦争と戦争の間に浮かぶ宇宙船より
「戦後」という現実を忘れ、未開の地を求め宇宙へ向かおうとする人間と現代社会を風刺するという作品群。
日本の昔話「さるかに合戦」に重ね、政治や現代社会の諸問題に再考を試みています。
絵画を中心とした作品群は、シリアスなテーマでありながらも、独特のタッチやユーモアセンス、色彩感覚を以っての突き抜けたポップさで魅せつけてくれます。
展示場所 | 愛知県美術館 8F →google map |
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6. 高橋 士郎|レーモン・ルーセルの実験室
1970年に当時極めて先進的であったコンピューター制御によるアートを展開した、テクノロジーアートの先駆者による展示。
広い空間にはガチャガチャと機械の音が鳴り響き、まさに「実験室」そのもの。
一定の軌道を行ったり来たりする金属で出来た人型オブジェなど、奇想天外なカラクリ装置の数々に楽しさを覚えるとともに、レトロフューチャリスティックなロマンがどこかしこから溢れてくるのを感じるでしょう。
展示場所 | 愛知県美術館 8F →google map |
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7. チェルシー・ナイト with ニック・ハレット、マシュー・ポール・ジンクス、クリスティン・サン・キム、ライアン・トレイシー|地に落つる
正方形の空間に4枚の巨大スクリーンが設置され、映像が投影されるインスタレーション。
イスラム批判として物議を醸し、世界中で数多く起きた事件の発端となった1988年出版の小説『悪魔の詩』を題材としている。
「冒涜」という概念を軸に、闘争と抵抗、そしてそれらに相反する静寂を、視覚と聴覚のみならず、緊張感や肉迫感といった全身で感じる感覚で受け止めさせられる作品。
展示場所 | 愛知県美術館 8F →google map |
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8. ジョアン・モデ|NET Project
白川公園・名古屋市美術館入り口前で行われる、カラフルな紐を幾重にも結びつけていく、一般市民参加型アートプロジェクト。
紐はやがてアーティストの手を離れ、参加者たちの手によって生き物のように育っていく。
参加者は紐を何本でも、どんな長さでどんな形で結びつけてもよく、束にしたり編んで縄のようにしたり、どんな作品になるかはまさに参加者次第です。
岡崎市の会場、豊橋市の会場でも同作品が展開されており、会期終了一週間前からは、3つの作品が愛知芸術文化センターに集結します。
展示場所 | 名古屋市美術館 入口前 →google map |
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9. 山城 知佳子|土の人
遥か昔の時代から、今日に至るまで独特の歴史、時代背景、社会状況に置かれる沖縄の地を舞台に、「鳥」「言語」「旅」をキーワードとした映像作品を3枚のスクリーンに投影して上映。
鳥が運んでくる種はさまざまな外地の詩を届ける。再びに地に蒔かれた種に込められた思いは、人々の旅への憧憬なのか、故郷の民としての抗いの願いなのか。
泥臭さや大地の映像表現、独特の音楽センスなどが観るものを圧倒する。衝撃的な23分間。
展示場所 | 旧明治屋ビル 3F →google map |
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● 開催場所とチケットについて
上記に紹介した以外にも、名古屋市内/豊橋市内/岡崎市内の会場において、最先端の現代美術/舞台芸術作品が展開されます。
会場の詳細は以下のとおり。
<名古屋市内>
・愛知芸術文化センター 名古屋市東区東桜1-13-2
・名古屋市美術館 名古屋市中区栄2-17-25
・長者町会場
・栄会場
・名古屋駅会場
<豊橋市内>
・PLAT会場
・水上ビル会場
・豊橋駅前大通会場
<岡崎市内>
・東岡崎駅会場
・康生会場
・六供会場
また、現代美術展のチケット料金は以下のとおり。
チケット種類 | 区分 | 料金 |
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普通チケット | 一般 | 1,800円 |
大学生 | 1,300円 | |
高校生 | 700円 | |
フリーパス | 一般 | 3,600円 |
大学生 | 2,500円 | |
高校生 | 1,200円 |
普通チケットは入場当日のみ同会場での再入場が可能、会場ごとに日を改めて入場できます。
フリーパスは期間中、国際展の全ての会場を何度でも観覧することが可能です。
展示や会場、チケットの詳細に関してはあいちトリエンナーレの公式サイトをご参照ください。
まさに創造性とアイデアに溢れた一大イベント。好奇心が誘う未知への旅のキャラヴァンとして、この秋、芸術の旅にぜひ出かけてみてはいかがでしょうか?