椅子をテーマに岡本太郎、草間彌生、オノ・ヨーコ、アンディ・ウォーホルなど約80点の作品を展示『アブソリュート・チェアーズ』が9月23日まで栄にて開催

イベント

座る姿勢を支える家具“椅子”を使い表現した展覧会『アブソリュート・チェアーズ 現代美術のなかの椅子なるもの』が2024年9月23日(月・振休)まで、名古屋・栄の愛知県美術館にて開催中。

展示会場を取材させていただきましたので写真と共にレポートをお伝えします。

国内外のアーティストによる作品約80点が展示

“椅子”

その機能は、座る姿勢を支えるというだけにとどまらず、権威の象徴として表されることもあれば、安楽や拘束のための道具となることもあり、また複数が寄り集まることでコミュニケーションの場を⽣み出すこともあります。

「アブソリュート(絶対的・究極的)」と「チェアーズ(椅子)」を組み合わせ銘打ったこの展覧会では、主に戦後から現代までの平面・立体・写真・映像・ダンスなど幅広いジャンルの「椅子なるもの」の作品の表現に着目し、椅子という身近な存在から社会や人間の有り様を考察。岡本太郎、草間彌生、オノ・ヨーコ、アンディ・ウォーホルなど国内外のアーティストの作品約80点を展示します。

アーティストの作品が5つのエリアに分かれて展示

副産物産店《Absolute Chairs #1_rodinʼs crate》2024年、作家蔵

展覧会では5章のエリアに分けて展示されています。会場入口の手前には今回の展覧会のために制作された副産物産店の『Absolute Chairs #1_rodinʼs crate』を展示。作品には埼玉と愛知のアーティストのスタジオや美術⼤学、そして会場となる埼玉県立近代美術館と当館を訪れて回収した廃材を使用。箱の部分は愛知県美術館所蔵 オーギュスト・ロダン《歩く人》のクレート(輸送用箱)を⽤いています。

第1章|美術館の座れない椅子

岡本太郎《坐ることを拒否する椅子》 1963年/c.1990年

草間彌生《無題(金色の椅子のオブジェ)》1966年

椅子の展覧会といえば、デザイナーズチェアーのような座る事を目的とした椅子の名品を集めたものをイメージしやすいですが、ここでは椅子という本来の用途を外れた“座れない椅子”を展示。岡本太郎《坐ることを拒否する椅子》や草間彌生《無題(金色の椅子のオブジェ)》といった作品が最初の部屋で存在感を示しておりました。

ジム・ランビー《トレイン イン ヴェイン》2008年

第1章のエリアにはもう1つの部屋があり、こちらにはスコットランドのアーティスト、ジム・ランビー《トレイン イン ヴェイン》を展示。DJとしても活躍するランビーのこの作品は音符が踊り音楽を楽しむように配置されたカラフルな椅子。見る角度によっては椅子がアルファベットのようにも見えてまるで歌詞を紡ぐかのようにも感じられました。是非様々な角度から作品を眺めてみてください。

第2章|身体をなぞる椅子

檜皮⼀彦《walkingpractice/CODE: Evacuation_drills[SPEC_MOMAS]》2024年、作家蔵

第2章のエリアに入ると車椅子ユーザーのアーティスト檜皮⼀彦《walkingpractice/CODE: Evacuation_drills[SPEC_MOMAS]》が展示されています。車椅子に取り付けられた“車いす編み機”から天井に向かってマフラーが伸びる。これは地面の凹凸やバリアによって起こる振動でマフラーの目地にはほつれや歪みが生じ、車いすがまだまだ受ける都市の障壁が可視化されています。名古屋の観光スポットを10時間かけて周り撮影した映像と共に見ることが出来ます。

第3章|権力を可視化する椅子

クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)《肘掛け椅子》 2012年

第3章は権力の象徴としての椅子を展示。クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)《肘掛け椅子》は1975年から92年まで内戦が続いたアフリカのモザンビークで民間に残された武器を農具や自転車などと交換するプロジェクト「銃を鍬に」から生まれた作品。座面、背もたれ、肘掛け、脚。すべて銃でつくられたこの作品には武装解除を進め、アートを通じて平和を構築しようという希望が込められています。

アンディ・ウォーホル《電気椅子》1971年

壁面に展示されていたのが、ニューヨーク州にあるシンシン刑務所の処刑室を撮影した報道写真に基づいて制作されたポップアートの旗手 アンディ・ウォーホル《電気椅子》。ウォーホル自身は政治性への無関心を装い続け、死刑制度への意見を表明することもなかったが、その制作態度は公権力への恐怖と決して無関係ではなかったようです。

第4章|物語る椅子

宮永愛子《waiting for awakening -chair-》2017年

第4章では私たちの生活の延長線上にある役割を前提にして表現された椅子を展示。部屋の中央に展示される宮永愛子《waiting for awakening -chair-》は常温で昇華するナフタリンでかたどられた白い椅子が透明の樹脂の中に封入され、原型となった椅子の時間、作家が制作にかけた時間、そして眠りについた白い椅子の時間と、異なる時間の流れが重ねられ、人間の営為を静かに物語っています。

名和晃平《PixCell-Tarot Reading(Jan.2023)》2023年

西洋アンティーク調の椅子とテーブルが無数の水晶のような球体で覆われた名和晃平《PixCell-Tarot Reading(Jan.2023)》。テーブルの上にはカラフルなタロットカードが並べられ運勢を占った結果を示している。しかし大小様々な球体に覆われているためカードの図柄を正確に捉えることはできず、読み取れそうで読み取れないこの占いをしていた時の人の心を表現しているようにも感じました。

第5章|関係をつくる椅子

ミシェル・ドゥ・ブロワン《樹状細胞》2024年

集団的な議論の場として広く用いられる会議椅子が球体状に組み立てられ、複雑に入り組んだ象徴性を構築しているミシェル・ドゥ・ブロワン《樹状細胞》。細胞の外見を模した椅子は、まるで外壁からの侵入を固く拒んでいるかのように見え、また作品としての形だけでなく、ライティングにより生み出される影も特徴的でした。

オノ・ヨーコ《白いチェス・セット/信頼して駒を進めよ》1966年/2015年

オノ・ヨーコの《白いチェス・セット/信頼して駒を進めよ》の駒も盤面も白く塗られたチェス・セットを挟んで置かれた椅子は、そこに座ってゲームを開始するよう促しています。しかしチェスはどちらも白く塗られているため、どの駒が自分の駒であるかを把握する事は出来ません。見ず知らずの相手と向かい合わせ、信頼にもとづくゲームを通じて誰かとの関係を結ばせようとしている作品に込められたメッセージを感じました。

この他にも数々の作品を展示

ハンス・オプ・デ・ビーク《眠る少女》2017年

会場にはこの他にも多数の作品が展示されています。椅子としての形状を見るだけでなく、ゆっくりとキャプションも見て回りながら作品に込められたメッセージを感じ取ってみてください。

展覧会『アブソリュート・チェアーズ 現代美術のなかの椅子なるもの』は2024718()923(月・振休)まで栄・愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)にて開催。開場時間は10:00から18:00まで(金曜日は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)となります。休館日は毎週月曜日、813日(火)、917日(火)ですが、812日(月・振休)、916日(月・祝)、923日(月・振休)は開館されます。

MAP

場所 名古屋市東区東桜1丁目13−2
期間 2024年7月18日(木)~9月23日(月・振休)
10:00から18:00まで(金曜日は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)
休館日 毎週月曜日、8月13日(火)、9月17日(火)
※8月12日(月・振休)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・振休)は開館
料金 一般 ¥1,500、高校・大学生 ¥1,300円、中学生以下無料
※学生の方は当日会場で学生証を提示してください
公式サイト 愛知県美術館ウェブサイト『アブソリュート・チェアーズ』