中川区・中川運河沿いの長良橋付近に2016年11月4日(金)にオープンした『珈琲元年 中川本店』。
名古屋市内には初出店となる新たな喫茶店チェーン。聞き慣れない店名ながら、運営しているのは実は名古屋でも歴史の深い珈琲の専門店だ。
店舗で提供されるメニューやサービスとともに、その出店背景や今後の展望に迫った。
こだわりの空間で楽しむハンドドリップコーヒー
看板に書かれた「ハンドドリップコーヒー」の文字が珈琲好きの心をくすぐったのか、
「珈琲元年 中川本店」は、店舗オープン直後から、多くの人で賑わいを見せている。
「珈琲元年」は元々愛知県清須市に2013年に第一号店をオープンさせていたが、
名古屋市内初進出となるこの店を改めて「本店」と銘打った。
店舗は名古屋市が進める『中川運河再生計画』に則り、運河沿いの空き地だった場所を利用して建設された。
内装は、名古屋喫茶では馴染み深い木のぬくもりが感じられるログハウス調の造りの中に、モダンな間接照明や植物も配置。女性にも居心地の良い空間を演出しており、綿密に計算されたこだわりが感じられる。
そして何といっても、中川運河をダイナミックに眺望出来る窓側席が印象的だ。
窓側の席以外からも外の光が差し込む明るい店の作りが、大きく開けたオープンキッチンをより際立たせる。
キッチンでは、オーダーを受けてから自家焙煎の珈琲豆を一杯一杯丁寧にドリップ。
その光景はさながら、近年注目を浴びているサードウェーブコーヒーのスタイルそのものと言えよう。
充実のモーニングサービスとメニュー展開
名古屋の喫茶店といえば欠かせないのが「モーニング」。
このお店のモーニングの最大の売りはモーニングサービスを13時まで提供しているという点。
ドリンクのみの値段で、
・モーニングA… トースト+ゆで卵+ポテトサラダ
・モーニングB… トースト+ゆで卵+小倉あん
・モーニングC… はちみつシナモントースト+ゆで卵
の3つのモーニングセットから好きなものを選ぶことが出来る。
また、追加料金を支払って特別なモーニングセットもオーダー可能だ。
こちらは人気メニューの一つ、パンサラダのついた『パンサラモーニング』。
かなりのボリュームに驚くが、開店〜13時までドリンク代+360円でオーダー可能。お得感はかなりのものだ。
一緒についてくるナッツのドレッシングをかけて食べると、酸味の中にほのかな甘みが広がりが感じられる。
全体がしっとりとして食べやすくなり、パンもサラダの一具材として違和感なく溶け込むのだ。
ビーンズ、山芋、オクラといった食材もふんだんに取り入れられており、健康志向の高い人にも喜ばれそうだ。
ドリンクはオリジナルの『珈琲元年ブレンド』のほか、
水出しアイスコーヒー、アイスキャラメルカプチーノ、アイス抹茶ミルクなど豊富な種類を展開。
またフレンチトースト、ワッフル、ケーキのほか、
ブリオッシュパンにアイスとホイップののった『ロンドマール』などのスイーツメニューも充実している。
名古屋喫茶に新たな風を吹かせる
珈琲元年を運営するのは、昭和23年創業・69年の歴史を誇る老舗『富士コーヒー株式会社』だ。
珈琲豆や業務用器具の卸売、店舗開業支援などに力を注いでいた同社は、
最盛期には直営店を10店舗展開していた時期もあったが、その後は中区栄に「カフェ・ラシュール」を出店する程度に留まっていた。
しかし再び直営ブランド『珈琲元年』を立ち上げ、店舗展開に至った理由とは、いったい何なのか。
名古屋および愛知県にはどこかしこに喫茶店があるようなイメージがあるが、実は何年も前から喫茶店の数は如実に減少しているという。
街の片隅にある古くからある店は姿を消し、駐車場の付いた大型店舗でないと繁盛しない傾向にあるのだ。
しかしコーヒーを求める人々の需要は高い。富士コーヒーは自家焙煎のハンドドリップコーヒーという強みを活かし、直営店舗展開に参入。
2013年に清須のロードサイドに第一号店をオープンさせたという流れだ。
今後も直営店およびフランチャイズ店も含め増やしていく考えだという。
ちなみに「珈琲元年」というキャッチーなネーミングは、
実は平成元年にギフト用に商標を取得したブランド名で、あらためて店舗のブランド名として使用したものだそうだ。
喫茶店業界は後継者不足だとも言われているが、近年のサードウェーブコーヒーの潮流が追い風を吹かせ始めている予感がする。
都会的なカフェのバリスタではないかもしれない。
しかしながら、古き良き喫茶店文化に新しいスタイルを取り入れたこのお店のような存在が礎となり、珈琲づくりに関心を強める若い人々が増えていくのではないだろうか。
喫茶店文化がより強い名古屋の誇りとなる、そういった未来を支えていく店だと感じ取ることが出来る店。今後の展開にも注目していきたい。
MAP
場所 | 名古屋市中川区広川町5-8 |
---|---|
期間 | 2016年11月4日(金)オープン <営業時間> 7:30〜22:00(モーニング:7:30〜13:00) 不定休 |
公式サイト | 珈琲元年|富士コーヒー株式会社 |