たまには、名古屋市営バスに乗って、普段行かない所へぶらり旅_
【市バスの車窓から】
今日は、幹神宮1号系統に乗って、熱田区南部〜港区・東海通沿いの海にゆかりのある街を巡ります。
神宮東門を出発
今回の旅の出発地点は、歴史ある熱田神宮東門のすぐ前。
熱田神宮の観光も良いが、これから始まるバスの旅に胸の鼓動が抑えられない。
なぜなら、これからとんでもない場所へと向かうのだから。
本当には皆に教えたくないが、この路線は、熱田神宮の歴史にも引けを取らない、名古屋の水辺の歴史を辿ることが出来る路線なのだ。
今回乗るバスは「幹神宮1号系統・河合小橋行き」。
神宮東門を出発し、熱田区南部を通って、「紀左ヱ門橋西」バス停以降はひたすら名古屋市道東海橋線(通称東海通)を西に進む。
神宮・伝馬町付近と、東海通付近、競馬場付近以外は壮大な鉄道空白地帯となるため、特に港区北部/西部の住民にとっては重要な生活の足となっているのだ。
5分も走っていると、車窓には水のある風景と歴史的な建造物が見えてくる。
ここが最初の目的地だ。
七里の渡し
神宮東門から4つめの停留所・熱田区の『七里の渡し(しちりのわたし)』。
名前からしていかにも観光地、という響きながら、ぽつんと地味に立つ箱型停留所という光景がなんとなく物悲しい。
「七里の渡し」とは、江戸時代に東海道の『宮宿』から『桑名宿』までを舟で渡る海路の距離が七里であったことからその名がついた。
知らない人のために説明しておくと、昔はいわばこの場所が「港」で、これより南側は「海」だったのである。
歌川広重の『東海道五十三次』にもこの場所が登場する。
現在は、『宮の渡し公園』としてその遺構を観ることが出来るようになっているのだ。
『尾張名所図会』にも当時の姿が描かれている。
東海道の中でも最大の宿場町であったとされている宮宿。宿屋や茶屋、旅籠屋が立ち並び、実に賑やかしい場所であったに違いない。
バスからも見えたこの建造物は『時の鐘』だ。
「時の鐘」は、江戸時代の人々に正確な時間を伝えるための鐘で、熱田神宮南の『蔵福寺』にあったが、戦災により鐘楼は焼失。
現在は被害を免れた鐘そのものは蔵福寺にあり、ここに建つ鐘楼は昭和58年に復元されたものだ。
こちらは『熱田湊常夜灯』。
夜間の航行の際、宮宿であることを示すための重要な建造物だが、こちらも昭和30年に復元されたもの。
ちなみに今も舟着場があり、こちらはイベントでの観光船や、堀川をクルージングする屋形船などの発着に使用されている。
堀川と新堀川が交わる瀬は広く、その光景に今もなお、昔の人々が船旅に馳せた想いを汲み取ることが出来るようだ。
このあたりは歴史的観光資源としてもう少し盛り上げられそうなものだが、正直今一つな感が強い。
臨港線踏切
「七里の渡し」を過ぎるとバスは、千年地区を経由し、東海通に出る。
地下鉄名港線に接続する「東海通」停で一気に乗客は増え、いよいよ車内も立ちが出るほど満杯になってきた。
つぎは・・・
『臨港線踏切』。
田舎にありがちな超絶ローカルポイントを指す停留所名だが、名古屋市営バスではなかなか珍しい。
バスマニアとしては下車しないわけにはいかない。
バス停の近くにはJR貨物名古屋港線(東臨港線)の「新東海道踏切」がある。
もちろん東臨港線が走る区間には他にも踏切があるわけだが、もはやバス停のネームバリューによって、臨港線の踏切といえばココ!!という有無を言わせぬ状況になっている。
貨物列車は週に数回の運行なので来る気配はない。警報機も鳴らない。線路は錆びついている。。。
線路脇の空き地はJR貨物が月極駐車場として貸し出しているようだ。
これももはや、鉄道による物流が盛んだった時代の遺構と呼べる領域に達しているのではないか。
線路から南の方向へ目をやると、遠くに名古屋港の観覧車が見えた。
このすぐ近くの場所には、もうじき巨大ショッピングモール『ららぽーと』の出店が決まっている。
港の役割も、時代とともに変わっていくのだ。
競馬場正門
幹神宮1系統といえばこのバス停が大きな稼ぎ頭の一つと言えよう。
『競馬場正門』。
「名古屋競馬場」入口直近のバス停。
競馬場への交通アクセスとしては、あおなみ線『名古屋競馬場前』駅もあるが、微妙に離れた場所にあるため、未だに東海通からバスで来る利用者も多い。
見事に今日はレースの開催日だ。
私はこれまでの半生こそ賭けの連続であったが、金を賭けてギャンブルなぞ一度もしたことがない。
折角の良い機会なので、競馬場を初体験してみよう。
ちなみに場内へは、馬券を買う買わないに関わらず、入場料100円を払えば入ることが出来る。
ちなみに場外には、『ファン用自転車置場』というのがある。
よって、私のように競馬ファンでない場合は、ここに自転車を駐めることが出来ないのだ。
5月とは思えぬ炎天下にも関わらず、場内には溢れんばかりの競馬ファン達が。
初めて生で見るパドック。
競争馬を眺めるのも良いが、その馬たちをじっくり品定めする競馬ファン達の眼光を観察するのも実に面白い。
折角なのでダイナミックなレースの写真撮影にチャレンジしたものの、大したものは撮れず・・・
レース中の場内はまさに熱狂の渦。
しかし私は金を賭けていないということもあるが、これまでの人生で一度も冷静でなかった瞬間がない氷のような人間であるため、こういったことには到底アツくなれないのである。
それよりもただ、昔は海だったこの地に今は馬が走っている_
そのことだけに感慨を傾けていたのだ・・・
この名古屋競馬場は廃止となり、弥富市に移転することが検討されている。
まさにこれから歴史の1ページを刻もうとしている場所に訪れてしまったのだ。
しかしそれを言うならば、全ての場所が歴史的な場所なのかもしれない。だからこそ旅は、面白いのだな・・・
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次回は引き続き、
幹神宮1号系統に乗って、終点『河合小橋』を目指します。