私なぞにも若かりし頃があり、その頃はいわゆるバブル期というやつで、日本全体が活気に湧いていた。
そしてその時代は何故か「水族館」がやたら流行っていた。「名古屋港水族館」が出来たのもその時代だ。
その当時、交際していた女性と思い立って蒲郡市の『竹島水族館』に行ったのだ。
がしかし、その日の帰り際、彼女から別れを切り出された。なぜだ…私は途方に暮れた。
そんな苦い思い出のある竹島水族館が、今圧倒的な支持を集め、年間12万人程度だった来訪客が年間40万人にまで増えているという。
休日ともなると、狭い館内に人が入りきらず、入場制限がかかり行列をなしているというのだ。
とんでもなく失礼な言い方をすれば、“キワモノ”扱いだったはずのこの水族館がなぜここまで人気になったのか。
あの頃といったい何が変わったのか。その理由を探りに、何十年ぶりかに足を運んだのであった。
巨大水槽ゼロ!「ミニマル水族館」の魅力とは
海と空の街・蒲郡の景勝地「竹島」にほど近い場所にある竹島水族館。
JR「蒲郡」駅から名鉄バスで約5分、徒歩でも約15分程度と良好なアクセス。
しかしその建物は驚くほど古く、狭い。何せ建物自体は1960年代に造られたものなのだ。
入口は開閉時に昔の病院の自動ドアのような音がする。
水族館の魅力というと、何を想像するだろうか?
巨大水槽の中で水がうねり、サンゴ礁が広がり、大きなサメやイルカが泳いだり、イワシが群れを成してトルネードを作ったりする光景を想像するのが一般的ではないだろうか。
しかし竹島水族館にはそのような巨大水槽など一つもない。
『三河湾大水槽』と題された水槽があるが、約2m程度の幅しかない。
飼育種数は約500種、館内を単純に観て回るだけの所要時間は約10分といったところ。
まさしくギリギリ水族館という体裁を成しているレベルの、ミニマルな水族館なのだ。
横長の水槽を悠々と泳ぐアジやタイ。間近で見られるド迫力…といいたいところだが、
おっさん目線には、どうしても『イケス』という言葉が脳裏をかすめる。
ただ、来訪客がそう感じているのを水族館側も見越しているようで、水槽の横には
『おいしそうに みえるじゃないか にんげんだもの(相田みつを風)』
などと書かれたポップがつけられている。
このあたりから少しずつこの水族館の魅力を紐解くことが出来る。この水族館の魅力の一つは、
ショボさを逆手に取った「自虐」だ。
魅力その1:ユルさで楽しませるポップ
竹島水族館の魅力の一つである「ポップ」は、ほぼ全ての水槽の脇に添えられており、さながら書店のポップのごとく、水族館のスタッフの手による自由度の高い解説文が綴られている。
最近はさまざまな水族館で人気ものになっているクラゲ。その横には…
「タケスイのちかくでみれるクラゲたち」のポップ。
絵があまりにもユルすぎる。
小学生の夏休みの自由研究をそのまま展示しているのかのようだが、クラゲの種類の中にゴミ袋が混じっているところに一抹のエンターテイメント性が光る。
こちらは名古屋城のお堀に出没したことで話題になった肉食魚「アリゲーターガー」。
時事ネタにもがっつり乗っかって笑いに変える。
また多くの魚に「魚歴書(ぎょれきしょ)」なる履歴書風プロフィールがついており、これもあまりに自由すぎる内容で面白い。
「アカエイ」の解説ポップでは、解説内容の50%が食用にすると美味いという内容。
もう半分も突っ込みどころ満載だ。
魅力その2:やたら「食い推し」
先述のアカエイのポップだけでなく、飼育魚の解説ポップにやたら「食い推し」が登場するのも大きな特徴。
海底でじっと身を潜める「オニオコゼ」。
若干グロテスクな外見にその生態も気になるところだが。。。
ポップには見た目や生態に関する記載はゼロ。
「高級食材オニオコゼ」「食べたらウマイ」と食用的な解説に終始一貫。
さらに衝撃的なのがこの【飼育員が食べてみましたコーナー】。
一般的には食べられることのない海の生き物を飼育員が自己責任で「食べてみた」レポートがつらつらと並んでいるのだ。
調理法や味まで写真付きで解説。中には深海生物「オオグソクムシ」の食レポも…。
生半可ではなく、ここまで体を張って食い推しされれば、こちらとしても感服である。
これらのポップをじっくりと読みつつ館内を回っていくと、その所要時間はゆうに1時間を超えるであろう。
展示物の巨大さや派手さが水族館の魅力なのではない、小さく地味な生き物そのものにこそ魅力が秘められているのだということを、独特のセンスでユーモラスに伝えてくれるのだ。
魅力その3:海の生き物にさわれるコーナー
もう少し水族館的にまっとうな展示としては、海の生き物に触れられる「さわりんぷーる」なるコーナーがある。
タッチすることが出来るのはタケスイ自慢の深海生物たち。
特に普通は水槽の中で姿を見られるだけのタカアシガニを間近に見られ、甲羅部分をタッチすることが出来るのは特に小さな子どもなどにはドキドキの体験であろう。
(足はデリケートなのでさわっちゃイヤよ、ということらしい)
そして深海版ダンゴムシとでもいうべき「オオグソクムシ」もタッチすることが可能だ。
本来であればここは手に持って顔のアップの写真でも撮影したほうが記事的に盛り上がるのだろうが、
個人的にこの手の生物は完全にムリ
なので、ご容赦願いたい。
竹島水族館的にはこのオオグソクムシを結構推しており、お土産コーナーに『超グソクムシせんべい』という土産物も売られている。
最近は他の水族館でもこれよりさらにデカイ「ダイオウグソクムシ」が人気になったりしているらしいが、個人的にはまったくもって解せぬ。。。
魅力その4:アシカショー
水族館の魅力といえば、なんといっても生き物によるショー!という方もいるかもしれない。
竹島水族館ではそういった需要に応える「アシカショー」が行われている。
開催時間は10:30/12:30(土日祝のみ)/13:30/15:00。
こちらがショーが行われるプール&スタンド。
「名古屋港水族館」などのそれと比べると天地ほどの開きのあるミニシアター感。
ショーを見せてくれるのはオタリア(アシカによく似た動物)の『ラブ』ちゃん(♀)。
皿の上にミカンを乗せ、落とさずに顔の上でバランスを取るという芸を見せてくれるが、、、
実は皿の上のミカンはもともと皿に固定されているという激ユルなオチ付き。
他にもさまざまなパフォーマンスを見せてくれるが、気まぐれでやってくれなかったり、ずっと飼育員にベタついていたりと、すべてはラブちゃんの機嫌次第らしいので、そこらへんは現地に行ったときのお楽しみにされたし。
変わりゆくタケスイ
竹島水族館では他にも定期的に変わる企画展示が実施されていたり、飼育動物もかなり入れ替わりがあるようだ。
この日はメスの魚特集『タケシマオサカナガールズコレクション(TOGC)』という展示が行われていた。
このようなフレキシブルで企画センスに溢れる催しで、何度来ても来客者を飽きさせない工夫がなされている。
ちなみに今回私が観て回って気になったのは、20数年前に来た際に最も強く印象に残った展示物がなくなっていたことだ。
昔は確か2階建てで、階段で2階に上がってすぐの場所にこのような展示物があった↓
それは『シロナガスクジラのペ◯スとワ◯ナの標本』。
ブルーとピンクに色分けされた展示枠の中に白白とした巨大な性器の標本が2つ並んでおり、当時「なんてエッジの立ちすぎた水族館なんだ!!」と衝撃を受けたものであった。
しかしながらよくよく考えてみると、
あの時彼女にフラれた原因はコレだったのかもしれん。いや、きっとそう。
今はこれほどまでにエッジの効いた展示物はないので、これからカップルやファミリーで行こうと考えている方は安心されたし。
なお、2017年9月〜12月末までの間、竹島水族館は耐震工事のため4ヶ月の間休館となってしまう。
私のこの記事と同じ姿の水族館を見られるのはこの夏休みの間だけかもしれない。
これからも変化と進化を続けていくタケスイに目を離さずにはいられない。
MAP
場所 | 愛知県蒲郡市竹島町1-6 ※JR東海道本線もしくは名鉄蒲郡線「蒲郡」駅から徒歩15分 ※蒲郡駅南口より名鉄バスで5分「竹島遊園」下車すぐ |
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営業時間 | 9:00〜17:00(最終入館16:00) |
休館日 | ①毎週火曜日(火曜日が祝日の場合は翌日) ※春休み、GW、夏休み、冬休み期間は火曜日も営業 ②6月第一週目の水曜日 ③12月29日/30日/31日★2017年9月4日(月)〜2017年12月31日(日)まで耐震工事のため休館となります。 |
入館料 | 大人500円 小中学生200円 小学生未満無料 |
駐車場 | ①水族館前駐車場(約40台)…無料 ②竹島園地駐車場(約200台)…平日無料/土日祝、4月27日〜5月8日は有料(4月・5月は500円、それ以外の月は300円) |
公式サイト | 竹島水族館 |