緑の宇宙船『滝の水公園』_そこに隠された悲しい過去とは

観光

緑区・滝の水にあるシンボリックな公園『滝の水公園』。
緑に囲まれこんもりと盛り上がった楕円形の台地のような形状は、まるで宇宙船のよう。

しかしなぜこの場所に急に山型の地形が出来ているのか、疑問に感じたことはないだろうか。
そこには、この滝の水公園に秘められたある悲しい過去が隠されているのです_

滝の水の閑静な住宅街の中の小高い公園。
標高は約35m。南西にある長い階段を登りきると・・・

見晴らしのいい芝生広場が広がる。
360度に広がる名古屋の眺望。天気の良い日は名古屋駅や名古屋港も遠くに見ることができる。
また名古屋随一の夜景スポットであり、夜にはカップルの姿も多くなる。

この穏やかな公園のある記憶が徐々に風化しようとしている。
今の若者たちは知っているのだろうか__

滝の水公園の成り立ち。
それは現在も南西階段を登りきる途中のツタに覆われた奥に明確に記されている。

滝の水公園は、伊勢湾台風で発生したがれきを埋め立てて整備された公園なのだ。

1959年9月26日
和歌山県沖に上陸した伊勢湾台風は、東海地方および近畿地方に甚大な被害をもたらした。
高潮が堤防を決壊させ、貯木場の材木を押し流し、家屋は倒壊した。
東海三県で死者・行方不明者は4,637人、被災者は120万人という日本の台風史上最大の被害となったのだ。

この地には1951年まで「名古屋薬学専門学校(現在の名古屋市立大学薬学部)」があった。
瑞穂区に校舎が移転したのち更地となっていたこの場所に、伊勢湾台風で発生した大量のがれきを集積、その上に土を盛り現在のような地形となった。

都市公園として整備されたのは1989年のことである。
現在もその歴史の名残として、公園内のところどころに腐敗したゴミから発生するガスを抜くための配管の姿を見ることもできる。

 

悲しい記憶、恐怖の記憶を人間は忘れたいと思ってしまいがちである。
しかしその記憶を風化させてはならない。
死者を悼み、教訓を伝え続けなければならないのだ。

その悲しみを乗り越えて創り上げられた明日。その上に私たちは立っているのだから__

MAP

場所 名古屋市緑区篠の風3-230