美濃焼の里、土岐市に新しく誕生した「KOYO BASE」は大人の社会見学スポットだった

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国内の陶磁器の産地で美濃焼としても有名な、土岐市に「食べる、買う、楽しむ、学ぶ」をコンセプトにしたショップがオープンします。「KOYO BASE」というJR土岐市駅から見える小高い丘にできた新たなショップは驚くほど大人の工場見学に最適で、美濃焼のみならず日本の伝統的な陶磁器を学ぶだけでなく、地場の野菜を使ったレストランも併設されていて当たり前にある器の存在感を見直すきっかけになりました。

今回はこの「KOYO BASE」さんを紹介します。

陶磁器の産地に訪れる前に……

KOYO BASEを紹介する前に、少しだけ美濃焼とは?を少し掘り下げてみました。美濃焼は岐阜県東濃地方の4市(土岐市、多治見市、可児市、瑞浪市)にまたがる地域で製作される陶磁器の総称で、美濃焼は1978年(昭和53年)には通商産業省(現・経済産業省)から伝統的工芸品に認定されていて、飛鳥時代に作られた須恵器から発展した伝統的な産業の一つです。黄瀬戸や志野、織部といった焼き物を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

美濃焼の生産拠点である東濃地方は日本最大の陶磁器生産拠点で、中でも土岐市は陶磁器生産量で日本一の街。土岐市、可児市、多治見市にまたがる山からは焼き物に良質な土が産出されることから古くは飛鳥時代から作陶が続いています。

美濃焼を愛した歴史的な人物で有名な人物は古田織部、千利休、織田信長、豊臣秀吉など戦国時代の名だたる武将ばかり。彼らは美濃焼の茶器を特に愛したとされています。

東濃4市が作陶で日本最大の産地になったのは安土桃山時代のこと。織田信長の経済政策を受けて、瀬戸の一部の陶工たちが美濃地方(土岐川以北)へ移り住み、焼成効率に優れた地上式の単室窯である大窯が多数作られたことから始まります。信長の政策を受けて「美濃焼」が焼かれ、一大産地になり、今に続く美濃焼の基礎が築かれました。

美濃焼は江戸時代末期頃から磁器の生産を始め、現在では和食器、洋食器を多く生産する大窯業地となりました。

しかし昭和期後半から平成にかけて、日本の陶磁器は海外製の安価な輸入陶磁器に押され生産量が大きく落ち込んでしまいます。令和になった今では海外製の陶磁器と比較されることも多く、土の産地である山の土の枯渇も懸念されています。

産業として大きくなった窯業はその技術を生かして工業用のセラミックデバイスの研究、開発が進みます。工業用のデバイスで思いつくのは自動車の点火プラグです。身近なところに実は美濃焼の技術が活かされています。

「KOYO BASE」は日常の当たり前を見直す拠点だった

KOYO BASEは土岐市にある光洋陶器株式会社(以下、光洋陶器)の敷地内にできたカフェ・ダイニング併設のショップです。ここでは地場の野菜やお肉をつかった季節のメニューを楽しめて、作陶体験もでき、光洋陶器のアイテムを購入することができます。工場見学の拠点もKOYO BASEになっていて、「食べる、買う、楽しむ、学ぶ」といったアクティビティーを一箇所で楽しめます。

器を楽しむとは?を再確認できます

筆者の独断と偏見でまとめてしまうのはあまり好ましくないのですが、料理を楽しむとは同時に器を楽しむにつながると思っています。戦国武将がこぞって茶器を愛でたそれに似てるかもしれません。KOYO BASEでは光洋陶器が製造した器で食事を楽しむことができます。

写真提供:KOYO BASE

取材当日はカレーを頂いたのですが、驚いたのはその器。なんと陶器でできたお重で提供されたのです。

普段の生活に一工夫することはありますが、器を変えてみると普段の食事がバージョンアップしたように感じます。器の当たり前を見直すとちょっとだけQOLが上がりますね。

器の形で味が違う?珈琲を飲み比べてみよう

「器を楽しむ」と一言で書いてしまうとそれまでです。が、器の形で珈琲の味が変わるのをご存知でしょうか?

珈琲には苦味、酸味、風味、甘みといった味が凝縮されていて、豆の焙煎度、挽き方、入れ方によって味が変わります。実はもう一つ要素があって、器の呑み口でも味が変わるのです。

KOYO BASEには器の形で味が変わることに着眼点を置いた3種類で同じ珈琲を飲み比べできるメニューが用意されています。珈琲はそれが苦手な人でも飲みやすい浅煎りの豆を使い、冷めても美味しいドリップ方法で淹れられていて、飲み飽きることのない量で提供されます。味の違いをぜひ楽しんでみてください。

また、これらカップも常設で売られていて、購入することもできるので味変をご自宅でも楽しめます。珈琲好きには何度も通ってしまいそうなKOYO BASE、素敵すぎます。

大人の工場見学、機械好きにはたまりません。

窯業が機械化されて半世紀以上。機械が好きな人はきっとテンションが上がる工場見学では生産ラインに入って実際の作業を見学できます。

生産ラインは機械化されていて、重たい作業の殆どは産業ロボットが使われていました。人が作業するのは印刷などの細かい作業で、器に色がつく工程は必見。そしてその工程が本当に面白い。

もし機会があれば工場見学時に通称「タコ」と呼ばれる工具を触らせてもらってください。シリコンの塊で、器に印刷するための工具なのですが、絶妙な硬さと重さを体験することになるでしょう。一言でまとめると「プルプルしてます」とだけ。※動作中は危ないので触らないでください。

工場見学は案内役の方に案内されながら大体50分ほど。製造の工程を見学することができます。普段何気なく使ってる器ができていく様子はなかなかに圧巻。少し詳しくなると器の見方が変わるので、お気に入りの器により愛着が湧くでしょう。

器、作ってみよう!

KOYO BASEでは器の絵付け体験のワークショップを開催しています(要予約)。転写シートを使って絵付けしたり、筆を用い絵を描いたりできます。

ここには一台、実際に使われていた型押し機が常設されていて、この機械がもう、筆者には萌えどころでした。

機械化、ロボット化、プログラム化された工程が楽しめる工場見学に対し、作陶体験の工房にはアナログのカム機が置いてあるのです。カムとは円盤状のプレートの動きで機械を動かす仕組みで、今ではほとんど見かけることのなくなった工業化の先駆者的仕組み。4枚から5枚のカムプレートが互い違いに動くことで一台の機械を制御しているのです。単一の形をつくるだけなら非常に効率のいい仕組みなのです。

機械は見学のみ可能なのですが、その工程を学ぶことができる作陶体験は是非楽しんでみてください。

「土から食卓へ」のコンセプトは優しさに包まれてます

KOYO BASEを見て回ると一つ気がつくことがあります。それは室内の壁、テーブル、椅子などのインテリアが生産において土を800℃で焼いた「素焼き」の色に合わせて作られているのです。「土から食卓まで」を標榜するKOYO BASE、入り口から素焼きの優しい色に迎えられます。

器を楽しむとは同時に自然の営みを感じることだと思います。KOYO BASEのコンセプトはまさに自然を身近に感じることで、器の一つひとつにコンセプトが活かされています。

大量生産、大量消費は今や昔の話、豊かになった生活こそ、当たり前を見直しにKOYO BASEへ訪れてみてはいかがでしょう?きっと心打たれる器が見つかりますよ。

MAP

場所 岐阜県土岐市泉町久尻1496-5
営業時間等 【カフェ・ダイニング】
11:00~17:00
ランチタイム11:00~14:00(L.O13:30)
定休日:火、水曜日

【工場見学】
開催日時:月~金(祝日除く)
開催時間:11:00~、13:00~(各回50分程度)
「ご予約方法」
一般:https://airrsv.net/koyobase/calendar
企業・団体:tour@koyotoki.co.jp

【ワークショップ】
開催日時:木~月
開催時間:11:00~、15:00~(各回1時間半程度)
「ご予約方法」
一般:https://airrsv.net/koyobase/calendar
企業・団体:tour@koyotoki.co.jp 

駐車場 無料駐車場が敷地内にあり
公式サイト KOYO BASE