昭和区・瑞穂区の消えゆく商店街を偲ぶ旅【市バスの車窓から③/基幹1】

観光

たまには、名古屋市営バスに乗って、普段行かない所へぶらり旅_
【市バスの車窓から】

今日は、基幹1号系統に乗って、昭和区西部・瑞穂区西部のレトロな商店街を巡ります。

◆ 今回のバス旅の概要

今回乗車するバスは、名古屋で初めて創設された基幹バス「基幹1号
栄から発車し、「丸田町」以降は国道41号線の両端に設けられた専用バスレーンを走行、南区の笠寺駅/星崎/鳴尾車庫へ向かう。

降車停は「東郊通三丁目(徒歩で移動し「円上」から再乗車)」「雁道」「名鉄堀田」の3つ。
今回旅する区間ではバスの行き先はどこでもよい為、本数は平日日中は1時間に5〜7本と多く、バスの時間をほぼ気にしなくていいのが嬉しい限り。

基幹1号の発車場所は「栄 噴水南のりば」。
基幹バスというと赤のラインが入った車体のイメージが強いが、この時間に来たのはあいにく青ラインの一般車…

ちなみに、この噴水南のりばは再開発の為廃止になることが決定している
奇しくもこの発車場所までもが、今回の旅のテーマである「諸行無常」に沿ったものとなったのだ。

 

◆ 東郊通三丁目〜円上

東郊通三丁目バス停付近を散策

4つめのバス停、「東郊通三丁目」で降車。
鶴舞公園前の次のバス停ということで都心にわりと近く、名古屋高速の高架がそびえる風景はわりと都会的に見えるかもしれない。

しかしながら、バス停のすぐ背後にはいきなりいぶかしい光景

都会的な風景とはあまりにギャップがありすぎる建物群の合間を奥に進んでいくと・・・

そこに現れたのはかなり古めかしい光景
なぜ、こんな場所に飲み屋街の痕跡が残っているのか??その謎を紐解いてみよう。

まず基幹1号は1974年までに廃止された名古屋市電東郊線の代替交通手段として設けられたものなのだ。
この「東郊通三丁目」バス停も、市電時代は「東郊通三丁目電停」があった場所だ。
市電がなくなったことで活気を失った街は名古屋市内に他にいくつもあるが、この場所も例外でないのではないか。
悲しいかな、鉄道とバスの違いはここにあるのだ。

結論を先に言ってしまうと、今回の旅では、度合いは様々ながらこのように寂れてしまった風景ばかりが登場する
つまらないと思われるかもしれないが、ここから先は、
【レトロの美】そして【諸行無常】を感じながら見てほしい。

 

天池本通商店街

廃墟のある場所から東に進むと、『天池本通商店街』に出る。
しかしながら、商店街の名を刻むものは街灯に架かる小さなネオンサインだけ。

所々古い商店がぽつんぽつんと垣間見えるが、アーケードや門のような商店街らしい華々しいものはない。

営業していそうな店舗を見つけても、実際は営業している気配がない。

そんな不遇の街並に見いだせるのはレトロの美
すべて鍵の絵のシールで表現された「カギ」の文字。楽しい。

その天池本通商店街をしばらく進むとあるのがこのレトロな喫茶店『西アサヒ 天池店』。
私が前々から来たいと思っていた場所だ。

年老いた老婆が一人で切り盛りしているこの喫茶店は、今も円頓寺商店街で営業している「西アサヒ」の系列店。
円頓寺の店は改装されモダンな感じに変わってしまったが、この店は今も入るのすらためらうレトロ純喫茶感を残している。

西アサヒ名物「タマゴサンド」とクリームソーダで一休憩。
乱暴に置かれた食卓塩にも、着色料的な味しかしないクリームソーダにも、一抹の眩しさを感じる。

 

都島通商店街

天池本通商店街を引き返し、東郊通三丁目停の空港線を挟んで西側には「都島(つしま)通商店街」がある・・・いや、あった。
もはや知識がなければここが商店街だったことは外観からはわからない。

酒屋、自転車屋、料理店などちらほら商店の痕跡があるが、多くが住宅もしくはビルに建て変わっている。
かつては「都島」も市電の電停があったとされるが、もはやこの地名も名古屋人で知る者はなかなか少ないであろう。

 

白金通商店街

都島通商店街を西に進みしばらくして南下すると、「白金通商店街」に当たる。
が、こちらもほぼ住宅やビルが軒を連ねる何の変哲もない通りとなっている。

レトロな街灯にほんの少し商店街の形跡が見られるが、看板は焼け焦げている。

通りの間から南方に目をやると、商業施設『シャンピアポート』が見える。
人々の集まる場所はこのような場所に完全に移ってしまったのだ。

白金通商店街を東に抜けると、「円上」バス停に当たるため、ここから再度バスに乗車しよう。

 

◆ 雁道

雁道/賑町商店街

円上から3つめのバス停「雁道(がんみち)」で降車。
レアなボックス型停留所も見逃せない。

雁道商店街はアーケードもあり、これまでの商店街に比べると明らかな華やびを感じる。

が、実情は華やかというわけでもない。
シャッターの閉まった店が軒並み散見される。

だがこの場所は今もなお昭和レトロの香りを今に残す貴重な街である。
銀座をぶらぶら歩くという意味の「銀ぶら」にあやかった「雁ぶら」の文字が。

 

特にレトロ商店街の香りが強いのが、雁道商店街の東側を南北に貫く『賑町商店街』。
やはり、商店街にはこの華やかながなくては!!

昔ながらの商店街には必ずある市場。
栄市場』はなくなってはいないようだが、残念ながらこの日は定休日のようだ。

この建物などは相当に古い・・・
ロゴタイプもイカしている。

勿論全てが立ち行くものではない。
だがこの昭和どころか大正浪漫さえ感じさせる風情。この光景が目の前にあるということに幸せを感じられるのだ。

 

◆名鉄堀田

堀田本町商店街

本来このバス旅企画は鉄道空白地帯を対象としているが、この流れで名鉄堀田駅前に行かないわけにはいかない。
バス停のすぐそばには名古屋市内ではレアな横断用地下道が。

バス停東にある「堀田本町商店街」。
ここはおそらくバブル期にモダンなコミュニティ道路に作り変えたパターンの商店街だ。

商店街を奥へと進むと現れる「エビス大黒市場」。

「古本買います」「競馬新聞」と看板に掲げられた書店。
そんなに競馬新聞の比重が重いのか…?不思議な街だ。

 

名鉄堀田駅名店街

最後はこの場所。
商店街とは違うが、レトロ過ぎる姿を見せてくれる、名鉄堀田駅奥の「堀田駅名店街」。

見事なまでのシャッター街。裏手に抜ける通路としてしか使われていない。

本当はここに入りたかった・・・洋食店『キッチンコーチャン』。
ランチタイムに間に合わなかったので準備中。

名古屋で現在、これほどまでに「盛者必衰の理」を感じられる場所が、しかも3km圏内に密集している区域は他にない。
時はうつろい、街もうつろう。
今この瞬間に見た美は朽ち果てるものの美。
旅は出会いの連続だが、すべてが一期一会の出会いなのだ。

ここまで読んでくださったあなたが、例え同じ場所を旅したとしても、これらとはすでに違う風景になっているかもしれない。